てんかんは、脳の神経細胞が過度に興奮し、意識障害やけいれんなどの発作を起こす病気です。人口100人のうち0.5~1人(0.5~1%)の患者さんがいます。
赤ちゃんから高齢者まで様々な原因で発症します。近年、注目されているのは高齢者で起こるてんかんです。ぼーっとしている、覚えてないことがある等の症状が特徴的です。
分かりにくいてんかんの症状
てんかんは1つの病名ではなく、発作を起こすいくつもの病気を総称したものです。よって、患者さん一人一人の病名を確定しなくてはいけません。
てんかんの診断に最も重要な事は発作を正確に捉える事です。発作は診察室で起こる事は稀なので、スマートフォンなどでビデオ撮影をしておくと診断の助けになります。でも、いつ起こるか分からない発作をビデオに収める事はなかなか難しいものです。本人は意識がもうろうとしていることがあるので、発作を見ていたご家族などにお話を聞く事があります。
検査の中心は「脳波」と「MRI」です。これらは患者さんによって条件を整える必要があるため、てんかん専門医による条件設定が必要なのです。さらに高度な検査が必要な際には、速やかにてんかんセンターと連携をすることが望ましいと考えられています。
治療の目標は発作を完全になくすことです。それにより妊娠することや運転免許を取得することも可能になります。
基本的には「抗てんかん薬」による治療が中心です。6割~7割の患者さんが適切な抗てんかん薬を服用することで発作がなくなります。発作が止まらない時は、診断が異なっている、抗てんかん薬が合ってない、手術が必要な状態、非常に難治な状態のいずれかです。
時に”てんかんは遺伝をする”、 ”てんかんをもつ女性は妊娠をしてはいけない”、”てんかんでは知能が低下する”などの偏見を耳にします。現在の様な検査方法がない時代に、医師はてんかんをしっかりと分類できていなかったことも原因だと思います。適切な診断と治療がなされないままでいると記憶障害や精神症状が出てしまう事はありますし、妊娠可能な女性に間違った抗てんかん薬治療をすると児に奇形が生じてしまう事も事実です。MRIの様な検査手法が次々と開発され、新しい抗てんかん薬が使えるようになり、てんかん外科の精度が上がっている現代では、てんかんは治せる病気になってきているのです。問題は発作が起きている時であり、発作がでなければ病気を持たない人と同じ生活を送れます。ですから、治療の目的は発作を”0”にすることなのです。